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ABM(アカウントベースドマーケティング)の始め方|6週間で1周目を回す体制設計

2026年4月21日
in 営業
Reading Time: 6 分でお読みいただけます。
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ABM(アカウントベースドマーケティング)は「100社に絞って深く攻める」手法と紹介されることが多いのですが、日本の中堅BtoBで始めた現場の大半は、1年以内にターゲットリストが形骸化するか、営業とマーケが別々の100社を追いかけ始めるかで沈みます。ABMの成否は、ツールの選定でもコンテンツの完成度でもなく、「100社を本当に組織としてやり切れる体制があるか」で決まります。本稿ではABMの始め方を、体制の現実から逆算する形で整理します。

この記事の要点

  • ABMは「手法」の話ではなく「体制」の話。営業とマーケが週1で同じ100社を議論できるかで成否が決まる
  • 始め方の定石「10〜30社から始める」は正しいが、多くの現場で軽視されるのは「その10社の撤退条件」の設計
  • ツール(CRM・SFA・IZANAMI等)は体制があって初めて効く。逆の順序で入れると必ず失敗する

Contents

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABM(Account Based Marketing)は、マーケティングの起点を「セグメント」ではなく「個別アカウント(企業)」に置く手法です。従来のデマンドジェネレーション型マーケティングが「幅広いリードを集めて絞り込む」ロジックなのに対し、ABMは最初から絞り込んだ名指しの100社前後に、営業とマーケが一体で働きかけます。

電通B2Bイニシアティブの解説によれば、ABMの典型的なステップは「ターゲットアカウント選定 → キーパーソン特定 → パーソナライズ施策の実行 → 効果測定と改善」の4段に整理されます※1。このステップ自体は教科書通りですが、日本の現場で躓くのは1周目を回し切った後、2周目に入れるかという一点に集約されます。

ABMの3階層:1:1 / 1:Few / 1:Many

ABMは対象アカウントの粒度で3つに分けられます。1:1 ABMは超大型アカウント1社を専門チームが追う形態、1:Few ABMは類似課題を持つ10〜30社グループを追う形態、1:Many ABMは数百〜1,000社を対象にしたややアカウント型寄りのマーケティングです※2。国内の中堅BtoBが始める時は、ほぼ例外なく1:Few ABMからがセオリー。1:1は専任体制が必要で、1:Manyは結局従来のマーケと区別がつかなくなるためです。

なぜABMは日本で「しぼむ」のか

日本でABMを始めた会社の多くが1年以内にしぼむ構造的な理由は3つあります。

①営業とマーケが同じ100社を見ていない

ABMの最低条件は、営業とマーケが同じ100社を毎週共有することです。しかし現場では、マーケは「ターゲット100社リスト」を作ってABMだと言い、営業は別の「今期受注できそうな見込みリスト」を追いかけている、という並行状態が頻発します。これは部門KPIの設計が別なまま始めることが原因で、ABMはKPI統合から始めるのが正しい順序です。

②「撤退条件」を決めないまま選定する

多くの現場は「どう100社を選ぶか」には時間をかけるのに、「いつ、何があれば100社から外すか」を決めません。結果、1年後もその100社のままで、接触実績の乏しいアカウントが半数以上残ります。撤退条件(例:6ヶ月間反応がなければ入れ替え、競合に受注された瞬間に外す、担当者が退職したら外す)を選定と同時に設計しないと、2周目以降の新鮮さが保てません。

③「パーソナライズ」を過剰にやろうとする

教科書的なABMの説明で「アカウント別にWebコンテンツを出し分ける」のような例が出てきますが、100社に対してそこまでやる工数は、国内中堅BtoBのマーケチームには普通ありません。現実的なパーソナライズの粒度は「業界別ランディング5本+顧客事例の業界出し分け」程度で十分。全部を個別にやろうとして1社分も完成しない、というのが最悪の失敗パターンです。

ABMの始め方:6週間で1周目を回す

1:Few ABM を、人員を増やさず6週間で1周目が回せる手順で整理します。

1:Few ABM を 6週間で 1周目まで回す Week 1 Week 2 Week 3 Week 4 Week 5 Week 6 体制統合 営業+マーケで KPI統合 週1会議の 議題を確定 選定基準 Tier A/B/C 採用・撤退条件 ICP (理想顧客像) 100社選定 Tier A: 20社 Tier B: 80社 CRM/SFAへ フラグ設定 キーパーソン 決裁者・ 関与者特定 IZANAMI等で 決裁者DB取得 施策実行 Tier Aに 個別アプローチ Tier Bに 業界別コンテンツ レビュー 入替判断 2周目設計 撤退条件に 該当する社を外す ※ 1周目を回し切るまでは「新しい施策を増やさない」ことが最も重要
図1|1:Few ABM を6週間で1周目まで回す手順(スマホは横スクロール可)

Week 1:体制統合(KPIを1つにする)

始めるときに最初にやるのは、ツール導入でも選定でもなく「営業とマーケが同じKPIを追う仕組み作り」です。具体的には、ABM対象アカウントでの商談創出数と商談進行率をABMの共通KPIとし、マーケと営業の評価指標に織り込みます。これをやらずに始めると、2ヶ月でマーケが独自リードを追い始めます。

同時に、週次の合同レビュー会議を30分で組みます。議題は①新たな動きがあったアカウントの共有、②停滞アカウントの打ち手、③撤退候補の議論、の3つだけ。議題を増やすと会議が形骸化します。

Week 2:選定基準とICPの確定

ICP(Ideal Customer Profile:理想顧客像)を4〜6項目で定義します。業界・従業員規模・売上規模・組織構造(事業部制/機能別)・意思決定スピード(前例は保守的か先進的か)・既存導入サービス、のような粒度。ここで抽象的になりすぎると次のアカウント選定で揺れるので、過去3年で受注した上位10社の共通項から逆算するのが再現性の高い方法です。

同時にTier A/Bの基準と、Tier Aからの撤退条件を確定させます。撤退条件の例:「6ヶ月間、関与者との接点がゼロ」「競合への導入確定」「担当者が退職しキーパーソンが不明」「業界自体からの撤退計画判明」。

Week 3:100社の選定と CRM/SFA へのフラグ化

ICPと基準を使って100社(Tier A 20社+Tier B 80社)を選定します。ここで重要なのは、選定の議事録をCRM/SFAのアカウント欄に残すこと。「なぜこの会社が入ったか」の根拠が残っていないと、1ヶ月後に誰もその理由を思い出せず、撤退判断が揺れます。

Week 4:キーパーソン特定

選定した100社のそれぞれについて、「決裁者・情報収集者・反対しそうな人・最終承認者」の4区分をできる範囲で埋めます。公開されている役員情報、LinkedIn、決裁者データベース(IZANAMI等)を使います※3。Tier Aの20社は4区分全部、Tier Bは最低決裁者1人を埋めるのが現実的な粒度です。

Week 5:施策実行

Tier A(20社)には個別のアプローチ――営業による直接架電、パーソナライズメール、展示会での個別招待、役員向けの個別レポート――を実施。Tier B(80社)には業界別のコンテンツ配信(メルマガ、セミナー案内、業界別ホワイトペーパー)を出します。Tier AとTier Bでかける工数の比率は3:1を目安に。Tier Aに工数を寄せるのがABMの核です。

Week 6:レビューと2周目設計

6週間での成果を振り返り、Tier Aから撤退条件に該当する社を外し、Tier Bから昇格させるレビュー会議を30分で実施します。これを毎6週間でループさせるのが、ABMをしぼませない最大のコツ。1周目で派手な数字は出ません。2周目・3周目で形になります。

ABMで使うツール群:CRM・SFA・MA・営業リスト

ABMは「専用ツールがないとできない」と紹介されることがありますが、実態は違います。CRM/SFA(Salesforce、Mazrica Sales、HubSpot)+営業リスト・決裁者DB(IZANAMI、Sales Marker)+コンテンツ配信(MA)の組み合わせで、中堅BtoBが必要とする機能は揃います※4。

CRM/SFAでのアカウントフラグ:「ABM-TierA」「ABM-TierB」のタグをアカウントに付与し、検索とダッシュボードで動きを追えるようにする。これだけで既存のSalesforce・HubSpotでABMの土台は作れます。

決裁者データベース:IZANAMIのような決裁者DBがあると、Tier A 20社分の役員・部長リストが短時間で揃う。このデータが不十分だと、Week 4のキーパーソン特定が属人化します。

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AIフォーム営業:IZANAGIは、Tier B向けの業界別アプローチ配信をAIで効率化できる。Tier Aは人力、Tier Bはツール、の役割分担が運用のコツです。

Sales Marker、APOLLO SALES、bizocean系のABMツールも選択肢ですが、最初の6週間で導入しようとすると体制の整備に回すべき時間が食われます。ツールは2周目以降に足すのが現実的な順序です※5。

体制と決裁者DBをセットで揃えるのが最短ルート

ABMの1周目に必要な材料

営業リスト収集ツール 営業リスト収集ツール

Week 4のキーパーソン特定は、決裁者DBの精度が成果を左右します。IZANAMIは決裁者・役員のデータを業界別に抽出でき、ABMのTier A(個別アプローチ対象)作りに向いた設計になっています。Tier BへのAIフォーム営業はIZANAGIで効率化。両方を揃えると、ABMの1周目の「手の動かし方」が現実的に回せます。

「ABMをやりたいがキーパーソンの情報が揃わない」フェーズの現場に向く組み合わせです。

ABMでよくある3つの失敗パターン

失敗①:100社を選んだ瞬間に安心してしまう

「100社を選定し、スプレッドシートに並んだ」時点でプロジェクトが終わったような空気になる現場があります。ABMはそこからが始まりで、6週間後のレビューまでに各社への接触が2〜3回分積み上がっていなければ、選定の意味がありません。選定の議事録を作った日に、Week 5の施策日程まで予定に入れておくのが実務的。

失敗②:Tier Aを30社に膨らませる

Tier A(個別対応枠)を「せっかくだから30社にしましょう」と膨らませると、1社あたりの工数が薄まり、結果的に全部に中途半端な対応になります。Tier Aは20社が上限(営業人数×4〜5社)を厳守。追加したくなったらTier Bから昇格させる枠組みで動かします。

失敗③:施策が「同じメール配信」に戻る

数ヶ月経つと、Tier B向けの業界別コンテンツが、従来のメルマガと区別がつかなくなる現象が起きます。ABMの業界別施策は、そのTierに属する企業が直面している具体的な業界イシュー(規制改正、技術動向、展示会日程)に寄せた内容である必要があります。月1で業界別の新しい論点を拾う体制を維持できないとここが崩れます。

配布:ABM 1周目スターターキット(6週間運用テンプレ)

【ABM 6週間 1周目 運用テンプレ】

■ Week 1(体制)
□ 営業マネージャー+マーケ責任者の2名で合意
□ ABM共通KPI(商談創出数/進行率)を両部門の評価に組み込み
□ 週次30分レビュー会議を6週分確保

■ Week 2(基準)
□ ICPを4〜6項目で定義(過去3年の上位10社共通項から逆算)
□ Tier A/B の基準を文書化
□ 撤退条件(最低3つ)を文書化

■ Week 3(選定)
□ Tier A 20社、Tier B 80社の初版リスト
□ 各社の選定理由をCRM/SFAのアカウント欄に記録

■ Week 4(キーパーソン)
□ Tier A の4区分(決裁者/情報収集者/反対者/最終承認者)埋め
□ Tier B の決裁者1人ずつ特定

■ Week 5(施策)
□ Tier A 20社に個別施策(架電・メール・招待)1回以上
□ Tier B 80社に業界別コンテンツ1本配信

■ Week 6(レビュー)
□ Tier Aからの撤退候補を議論
□ Tier Bからの昇格候補を議論
□ 2周目の起点日を確定

よくある質問

Q. ABMに最低限必要な人員は?

1:Few ABM(100社規模)なら、営業2名+マーケ1名の3名体制から回せます。専任である必要はなく、既存業務の中でABM対象アカウントに時間の3割程度を寄せる形で始めるのが現実的。最低条件は「営業マネージャーとマーケ責任者の両方がABMにコミットする」こと。片方だけだと確実にしぼみます。

Q. 1:1 ABMを最初から始めてもいい?

基本的には推奨しません。1:1 ABMは超大型アカウント(年間契約額が売上の◯%以上)1社に対し、専任チームが動く形態で、費用対効果の見通しが立つ案件でしか成立しません。1:Fewで1周目を回し、ABMのオペレーションに慣れた後で、1:1に昇格させる候補アカウントを決める順序が安全です。

Q. ABM専用ツール(6sense、Demandbase等)は必要ですか?

国内中堅BtoBで1周目を回す段階では、ほぼ不要です。既存のSalesforce/HubSpot/Mazrica Sales+営業リスト/決裁者DB(IZANAMI等)+MAで土台は作れます。ABM専用ツールは、アカウント数が数百社規模に膨らんだ2〜3周目以降で検討する順序が現実的。最初からツールを入れると、体制の整備が後回しになり、結果しぼみます。

Q. ABMの成果はいつ頃から出始めますか?

Tier Aに対する商談創出は、3〜6ヶ月後から動き始めるのが標準的な感覚値です。BtoBの稟議・決裁プロセスが3〜6ヶ月単位であることを考えると、これより早い成果を期待すると途中で設計が歪みます。ABMはランニングコストを落として長期で回す前提の施策で、短期の数字を追う施策ではありません。

まとめ

ABMは手法ではなく体制の話です。100社を正しく選ぶことより、選んだ100社を営業とマーケが週1で同じ土俵で議論できる体制を作る方が圧倒的に重要。始め方のコツは、①KPIの統合、②選定と同時に撤退条件を決めること、③1周目で施策を増やしすぎないこと、の3つ。

ツール(CRM、SFA、MA、決裁者DB)は体制があって初めて効きます。逆の順序、つまりツールを入れてから体制を考える順番だと、日本のBtoBでは1年以内に高確率で沈みます。まず6週間の1周目を、人員を増やさずに回し切ることから始めてください。2周目以降で、このフレームが会社に残ります。

参考資料

■ 公的機関・法令

※ デジタルスキル標準(DSS-P) ver.1.2|経済産業省・IPA(2024年7月改訂、DX推進人材の役割定義):デジタルスキル標準

※ 2025年版中小企業白書 第5節 デジタル化・DX|中小企業庁:デジタル化・DX

■ 業界情報・民間調査

※1 5分でわかるABM:アカウントベースドマーケティング 完全ガイド|電通B2B:電通B2Bイニシアティブ

※2 ABM(アカウントベースドマーケティング)とは|マクロミル:マクロミル BtoBマーケティング用語

※3 IZANAMI 決裁者営業リスト:IZANAMI

※4 HubSpot ABM(アカウントベースドマーケティング)ガイド:HubSpot Japan

※5 なぜABMは製造業と相性がよいのか|MarketOne Japan:MarketOne Japan

Tags: ABMBtoBマーケティングBtoB営業IZANAMIアカウントベースドマーケティング営業マーケ連携決裁者
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