営業リストの作り方を検索すると、どのページも「ターゲットを決める→情報を集める→表にする」と書いてある。これ自体は間違っていない。だがSaaS・人材・製造業で同じ手順を踏んだリストが、実際の現場で同じように機能することはまずない。反応率どころか、そもそも担当者に届かない。見るべきは業種そのものではなく、業種ごとに違う「買い手のプロセス」「意思決定層」「使えるチャネル」の3つだ。
この記事の要点
- 業種で分ける前に「買い手プロセス・意思決定層・チャネル適合」の3軸で設計する
- SaaS/人材/製造は、共通5列+業種別3列のハイブリッドでリストを組む
- 実名ツールは単体で完結しない。IZANAMI・Sales Markerなどを役割で使い分ける
Contents
業種別に業種別 営業リストを作る前に──3つの設計軸を固める
「SaaS業界の営業リストの作り方を教えてください」と相談が来たとき、まず返す質問は決まっている。「誰に届ける前提で、どの順番に当てるリストですか?」だ。この2つが決まっていないのに業種だけで切ろうとすると、結局ただの業種別企業一覧になってしまう。これは売上には繋がらない。
営業リストは「対象を列挙したもの」ではなく「営業行動の順序が仕込まれた設計物」だ。ターゲット企業に必要な情報として、企業名・業界/業種・企業規模(従業員数や売上高)・所在地・担当者の連絡先などが必要と解説されているが※1、実務ではこの列だけでは打ち手が決まらない。業種ごとに、追加で持つべき列が変わる。
軸1|買い手プロセス(稟議の前のどこにいるか)
SaaSなら「起案→PoC→稟議」、人材なら「求人発生→要件化→媒体決定」、製造業なら「課題→現場検証→購買決定」と、社内で営業が追いかけるべきポイントが異なる。リストは、このプロセス上のどの段階にいる企業が対象かで絞る。
軸2|意思決定層(部門と役職の組み合わせ)
SaaSは現場部長+情シスの2点受け、人材は人事部長または採用責任者の1点、製造業は工場長・購買・品質保証の3点受けになりがちだ。この違いを無視してリストを「代表電話番号だけ」で作ると、総務で止まる。
軸3|チャネル適合(届け方とリストの列は連動する)
SaaSならフォーム営業・ウェビナー登壇、人材なら電話・直アポ、製造業なら展示会後フォロー・紹介・FAX DMといった具合に、向くチャネルが違う。リストに載せる項目は、このチャネルで使うデータから逆算する。電話をかけないのに代表番号の列に時間を使う必要はない。
SaaS業界の業種別 営業リスト──「導入適性」を列で持つ
SaaS同士の売り込みは、同業の意思決定を知っている前提で会話が始まる。だからリストには「今どのSaaSを入れているか」「直近の資金調達」「エンジニア比率」の3列を個別に持つと、メッセージが一気に具体化する。
SaaS営業はプロセスごとに職種が分かれており、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに役割が分解される構造だ※2。つまりリストは「誰に渡すか」によって必要な列が変わる。インサイドセールスに渡すリストに連絡先が抜けていても、フィールドセールスに渡すリストにBANT情報がなくても、どちらも回らない。
SaaSのリストは、次の順番で組むと無駄が少ない。
- 基礎列:社名、業種、従業員規模、本社所在地、事業内容
- 導入適性:利用中の類似SaaS、最終調達ラウンド、IT投資の姿勢
- 接点:問い合わせフォームURL、公開メアド、イベント登壇履歴
SaaS向けリストに入れてはいけない列
経営者個人の携帯番号、非公開の売上高、SNSで拾った個人の出身校。こうした情報は、個人情報保護委員会が示す「不正の手段による取得の禁止」の論点に触れやすい※3。SaaSの相手は個人情報の扱いに敏感な会社も多いので、法令上のグレーはそもそもリスクでしかない。
SaaSリストの”最初の50社”は手で作る
ツールで一気に2000社をリスト化する前に、手作業で50社だけ作る時期を設けるのがおすすめだ。手で作ると「本当に商談可能な会社像」が見えてくる。2000社に一斉送信する前に、この50社で文面・接点設計・競合比較の論点を検証しておくと、残り1950社への投下効率が段違いに変わる。最初に数を広げず、質で輪郭を固めるほうが、結果的には早い。
人材業界の業種別 営業リスト──「採用需要の強度」をスコアで持つ
人材紹介会社のBtoBマーケティングの主なターゲットは人事採用担当者であり、新規の求人開拓が事業の生命線だと整理されている※4。ここでリストがただの企業一覧だと、採用状況が活発な会社と止まっている会社が混在し、架電の打率が壊滅する。
人材業界のリストは、共通5列に加えて次の3列を持つと精度が一段上がる。
- 求人公開状況:どの求人媒体に今出しているか/何職種か
- 直近入社の傾向:LinkedInや公式リリースから読める人材動向
- 拠点拡大・新卒採用:新オフィス、支社開設、新卒枠の規模
これらはいずれも「採用の熱量」を代理で測る列だ。熱量が高い会社に、熱量に合う温度の連絡をするから、人材業界の営業は回り始める。
反直感:業種で絞るほど打率は下がる
「人材業界は製造業と相性がいいから、製造業に絞ろう」は、リストを劣化させる典型的な縮め方だ。製造業という業種の中にも採用熱量ゼロの会社がたくさんあるし、飲食の中にも今まさに大量採用の会社がある。業種ではなく、軸2(意思決定層)と軸3(チャネル)で絞るほうが、同じ時間で打てる数が倍になる。
人材業界のリストは「職種スコア」を1列加える
求人公開状況の列を作ったら、もう一歩踏み込んで「どの職種でどれだけ長く出ているか」を数値化する列を加える。3ヶ月以上同じ求人が出続けている会社は、要件不一致か採用チャネルの迷走のどちらかが起きている。つまり困っている順に並び替えられる列になる。この1列があるだけで、架電の優先順位は根本的に変わる。
製造業の業種別 営業リスト──「稟議の通りやすさ」を列で持つ
製造業のリストは、他の2業種と発想がまるで違う。SaaSや人材が「意思決定の速い現場部長」を狙うのに対し、製造業は工場長・購買・品質保証の3者の合意形成が必要になることが多い。中小企業白書でも、業種ごとにばらつきがあり、製造業を含む多くの中小企業で生産性向上と新規開拓のためにデジタル活用が鍵となる点が指摘されている※5。リスト設計もこの「複数の意思決定者」に合わせる。
個別3列として持つのは次の情報だ。
- 主要製品/加工種別:切削・板金・樹脂成形・装置組立など
- 設備投資・補助金:ものづくり補助金の採択履歴、設備拡張リリース
- 元請/下請の構造:自社ブランド/OEM/一次下請/二次下請
この3列があるだけで、製造業向けのアプローチ文は大きく分岐する。OEM主体の一次下請には「元請の変動リスクを下げる新規取引先」が刺さり、自社ブランドを持つ中堅には「販路拡大の仕組み」の話が通る。同じ「製造業」で一括りにすると、両方外す。
失敗例|業種リストを買っただけで動き出した会社
以前、製造業向けに400社のリストを外部購入し、代表番号に片っ端から架電した中堅SaaS企業があった。2週間で獲得アポは1件、その1件も決裁権者不在で失注。後から振り返ると、400社のうち購買決定権を工場長が持つ会社はおそらく半数以下で、それ以外は本社側の購買部門が先だった。業種ではなく「誰が購買権を握っているか」の列がなかったから、架電の9割は最初から届いていなかった。リストを買うこと自体は悪くないが、「どんな列の列挙から買うか」を先に決めていないと、ただの電話帳になる。
実名ツールの使い分け──1つで完結させない
営業リスト作成に使えるツールは、役割で完全に分かれる。1つのツールに全部をやらせようとすると、どこかで詰まる。
- IZANAMI(izanami.link):基礎情報+業種・規模で絞る”台帳”として。SaaS・人材・製造いずれの土台にもなる
- Sales Marker(sales-marker.jp):意向データで「今検討中の会社」を抜き出す用途。SaaSとの相性が良い
- URUTEQ・リスト王国・Listers:業種特化のリスト補完。人材・製造の地方企業をピンポイントで補強する※6
- 自社CRM/SFA:上記で作ったリストを流し込み、架電・フォーム営業・メール配信の結果を記録する器
この4階層で整理しておくと、「どのツールを選ぶか」ではなく「どのツールをどの層で使うか」という議論に変わる。ツール選定の失敗の9割は、ここの分解が甘い。
フォーム営業へつなぐなら、チャネル側の自動化を分ける
作ったリストをフォーム営業に流す場合、リスト作成ツールとは別に送信ツールを噛ませる。現場ではIZANAGI(izanagi-ai.com)のようなAIフォーム送信ツールが担当する。送信側を分離しておくと、文面の改善サイクルとリストの更新サイクルを別々に回せる。一体化させると、文面の問題か対象の問題か切り分けが難しくなる。
業種別 営業リストでよくある3つの失敗
業種別リスト作りで起きる失敗は、大きく3つに集約される。どれも「業種で切る」ことを目的化した瞬間に起きる。
- 列が足りない失敗:基礎5列だけで作ってしまい、アプローチ文面が全社同じになる。結果、反応率が伸びない
- 列が多すぎる失敗:埋まらない列を無理に作り、空欄だらけになって運用が止まる。営業担当者は埋まっていない列を信用しなくなる
- 更新が止まる失敗:1回作って終わり。人材業界のように「求人公開状況」が重要な業種では、3ヶ月で列の半分が古くなる
列の設計は「埋められる人・タイミング」とセットで決める
個別3列を設計するときは、同時に「この列は誰がいつ埋めるのか」も決める。SaaSの「利用中SaaS」は、初回架電時にヒアリングして埋める列にする。人材の「求人公開状況」は、週1回のスクレイピング or 外部データ購入で自動更新する列にする。製造業の「補助金採択」は、月1回中小企業庁の公開情報から拾い直す列にする。埋め方が決まっていない列は、作ってはいけない。
配布テンプレ|業種別リスト設計チェックリスト
現場ですぐ使える、業種別リスト設計のチェックリストを置いておく。そのままスプレッドシートにコピーして運用できる。
【共通5列】
□ 社名
□ 業種(標準産業分類ベース)
□ 従業員規模(1-9/10-49/50-299/300-999/1000+)
□ 所在地(都道府県+市区)
□ 担当部署
【SaaS:個別3列】
□ 利用中の類似SaaS
□ 最終資金調達(金額とラウンド)
□ エンジニア比率の推定
【人材:個別3列】
□ 求人公開状況(媒体と件数)
□ 直近入社の傾向(職種)
□ 拠点拡大/新卒採用の有無
【製造業:個別3列】
□ 主要製品/加工種別
□ 設備投資・補助金採択履歴
□ 元請/下請ポジション
【運用設計】
□ 列ごとに「誰が・いつ・どこから」更新するかが決まっている
□ 架電/フォーム/メールのどれに使うリストかが明記されている
□ 3ヶ月ごとの棚卸日程が決まっている業種別リストの土台を一気に整えたい場合
IZANAMIは、業種・規模・地域の基礎データを広域で抑えるのに向いている。まずここで台帳を作り、Sales Markerや自社CRMで意向データ・運用データを足していくのが、実務で回りやすい組み立てだ。
FAQ|業種別リスト運用の現場質問
Q1. 業種別に3種類のリストを持つと運用が破綻しませんか?
共通5列は1つのマスタにして、業種別3列だけをタブで分ける設計がおすすめだ。マスタを二重で持たないのが破綻しないコツ。
Q2. 業種をまたぐ会社(製造業+自社SaaS)はどう分類しますか?
「売りたい商材が刺さる顔」で分類する。製造業向けに売るなら製造業、SaaSベンダー向けに売るならSaaSとして扱う。業態ではなく用途で切ると迷わない。
Q3. 業種が違うと、使うツールも全部変えるべきですか?
いいえ。台帳を作るツール(IZANAMI等)は共通でよい。変えるべきは「意向データを足すツール」と「届けるツール」の2層。
Q4. リストの更新頻度はどれくらいが適切?
列ごとに決める。基礎5列は半年、SaaSの資金調達列は月1、人材の求人列は週1、製造の補助金列は月1が目安。一律に決めないほうが運用は続く。
まとめ──業種で切るのは最後にする
業種別の営業リストを作る話は、どうしても「SaaSはこう、人材はこう、製造業はこう」と業種から入りがちだ。だが現場で効くのは逆の順番で、まず「買い手プロセス・意思決定層・チャネル適合」の3軸で設計仕様を決め、それを業種ごとの列設計に落としていく流れだ。共通5列+業種別3列のハイブリッドに、列の更新担当と頻度を紐づけるところまでやって、初めてリストは資産になる。ツールは台帳・意向データ・送信・CRMの4階層で役割を分け、1つに寄せない。業種で切ることは、ここまで整ってからやる最後の仕上げでしかない。
参考資料
■ 公的機関・法令
※3 個人情報取り扱いの基本論点について
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)|個人情報保護委員会
※5 中小企業の販路開拓・デジタル活用について
2025年版 中小企業白書|中小企業庁
■ 業界情報・民間調査
※1 営業リストに必要な項目と作成方法
営業リストとは?作り方と管理・運用のコツ|営業DX Handbook by Sansan
※2 SaaS営業の役割分解について
SaaS営業とは?仕事内容や一般営業との違い、必要なスキルを解説|営業ラボ
※4 人材紹介会社のBtoBマーケティングについて
人材紹介会社が取り組むべきBtoBデジタルマーケティングノウハウ|PORTERS
※6 業種特化の営業リストについて
業種特化リスト一覧|リスト王国





